当事務所では、交通事故に関する多数のご相談・ご依頼をいただいておりますが、バイク乗車中の交通事故を取り扱うことも少なくありません。

四輪車同士の衝突による交通事故であれば、比較的軽傷で終わるケースも多いのですが、バイク乗車中の交通事故では、骨折や頭部外傷などの重傷を負うことも少なくありません。
その理由は単純で、四輪車に乗車中は金属製の車体やシートベルト、エアバッグに身体を守られているのに対して、バイク乗車中の交通事故では生身の身体が剥き出しになっていることが要因なのです。

このページでは、こうしたバイク乗車中の交通事故(バイク事故)の特徴について、ご説明させていただきます。

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バイク乗車中の交通事故の重傷率と致死率

警察庁が発表した令和3年の交通事故統計のデータについて、一部抜粋して下記のとおりにまとめました。

四輪車乗車中 二輪車乗車中 原付乗車中
死者数 860人 332人 131人
重傷者数 6,717人 4,192人 2,777人
全死傷者数 217,643人 23,437人 17,074人
致死率 0.40% 1.42% 0.77%
重傷率 3.48% 19.30% 17.03%

※重傷者=30日以上の治療を要する負傷。
※致死率=全死傷者数に占める死者数の割合。
※重傷率=全死傷者数に占める死者数+重傷者数の割合。以上のデータからは、四輪車乗車中の交通事故に比べて、二輪車乗車中・原付乗車中の交通事故での致死率・重傷率が明らかに高いことがお分かりいただけると思います。

なお、原付乗車中の交通事故での致死率が、二輪車乗車中の交通事故での致死率よりも低いのは、原付の法定速度が時速30kmに制限されているため、事故時の速度が低速であることが要因であろうと考えられます。
ただし、二輪車乗車中の交通事故と原付乗車中の交通事故とで、重傷率には大きな差はありません。

バイク乗車中の交通事故による後遺障害

頚椎捻挫・腰椎捻挫など

頚椎捻挫(頚部挫傷・外傷性頚部症候群)や腰椎捻挫(頚部挫傷・外傷性頚部症候群)を受傷したケースでは、後遺障害14級9号の認定が問題となることが少なくありません。

後遺障害等級の認定機関である自賠責保険の調査事務所では、後遺障害14級9号の認定に当たって、事故時に被害者が受けた衝撃の強度を判断の一要素としています。
そのため、四輪車同士の衝突事故において、物損額が10万円程度やそれ以下というケースでは、後遺障害が認定されづらい傾向にあります(ただし、頚椎捻挫や腰椎捻挫の予後には、衝撃の強度のみならず、衝撃の角度や衝撃の受け方も多大な影響を及ぼします。したがって、物損額が絶対の要件というわけではありません)。

これに対し、バイク事故では、転倒などで被害者が受ける衝撃が大きいものと判断され、物損額の低さがネックとなることはあまりありません。

骨折・頭部外傷など

バイク事故で骨折や頭部外傷を受傷したケースでは、受傷した部位および傷害の程度によって、認定される後遺障害が異なってきます。

骨折後の痛みであれば、14級9号または12級13号が認定されることが多いです。
関節部分の骨折によって、可動域制限が出た場合には、その程度(角度)によって、12級6号~8級6号(上肢の可動域制限の場合)などが認定されることになります。

また、頭部外傷によって、認知機能の低下や性格の変化などが発生していれば、高次脳機能障害として、後遺障害等級認定がなされます。
高次脳機能障害のケースでは、適正な後遺障害等級の認定を受けるために、脳損傷の画像所見や障害の程度を示す検査資料を揃えるなど、申請前に十分な準備をすることが大切です。

バイク乗車中の交通事故の過失割合

交通事故の過失割合については、別冊判例タイムズ№38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」全訂5版という書籍をもとに判断がなされるケースが多いです。
この書籍は、過失割合に関する過去の裁判例を事故類型ごとに整理したもので、裁判官や弁護士、保険会社が参照する必携書です。

上記の別冊判例タイムズ№38では、四輪車同士の衝突による交通事故と比べて、バイクと四輪車との交通事故では、過失割合がバイク側にやや有利に設定されています。
例えば、青信号で直進車と対向右折車とが衝突した右直事故において、①四輪車同士の場合には直進四輪車20:右折四輪車80の過失割合が基本であるのに対し、②バイク対四輪車の場合には直進バイク15:右折四輪車85の過失割合が基本とされています。

バイクは四輪車と比べて車体が小さく、交通事故が発生した場合の被害も大きくなることが多いです。
そのため、バイクは四輪車よりも弱い立場にあるものとして、バイク側の過失割合が減らされるという調整がなされているのです。

バイク乗車中の交通事故で使える保険

弁護士費用特約人身傷害保険などが付帯されていれば、適用することができます。
この2つは非常に有用な保険であり、保険料も1か月当たり数百円程度と低額ですので、付けておくことを強くお勧めします。

また、自動車を保有している場合は、その自動車保険にファミリーバイク特約が付いていれば、原付乗車中に交通事故が発生した場合でも、対人・対物賠償保険や、人身傷害保険(自動車保険に人身傷害保険が付帯されている場合)の適用を受けることが可能となります。

まとめ

バイク乗車中の交通事故(バイク事故)では、怪我の内容や後遺障害が重いものとなることが多く、それに伴って損害額も高額となるのが通常です。
バイク事故の被害に遭われた方は、適正な賠償額を確保するために、事故直後の段階から交通事故に精通した弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。