前の2回に引き続き、交通事故における刑事記録の取得について、ご説明させていただきます。
今回は、人身事故を起こした加害者が起訴された場合に、どのような手続で、どのような資料が取得できるのかをご説明いたします。
まず、加害者が起訴された公判段階(刑事裁判中)では、犯罪被害者参加制度(※)を利用している場合は、検察が公判提出用の証拠資料を整理した段階で、検察庁でそれらをコピーすることができるようになります。
また、犯罪被害者参加制度を利用していない場合は、第1回公判後に、犯罪被害者保護法3条に基づき、裁判所の許可を得て、公判に提出された証拠資料を裁判所でコピーすることができます。
ただし、担当裁判官によってコピーを許可する範囲が異なったり、加害者側で提出に「不同意」とした部分は黒塗りになっていたり、提出されていなかったりします。
したがって、公判段階での資料の取得について言えば、犯罪被害者参加制度を利用した方が、より広い範囲でのコピーを取得することができます。
※犯罪被害者参加制度については、後日のコラムで取り上げたいと思います。
また、加害者に刑罰が下され、裁判が確定したあとは(略式命令による罰金が科された場合を含む)、「保管記録閲覧請求・謄写申出」という手続により、実況見分調書を含む裁判の記録一式を検察庁でコピーすることができます。
ただし、関係人のプライバシーに関する部分は除かれます。
このように加害者が起訴された場合に取得できる、実況見分調書以外の重要な資料としては、警察や検察が関係者(加害者、被害者、目撃者など)を取り調べた供述調書などが挙げられます。実況見分調書のコピーだけしか取得できない不起訴処分の場合よりも多くの資料を取得できるため、より精度の高い検討が可能となります。
以上、刑事記録の取得について3回にわたりご説明させていただきました。
人身事故において事故状況や過失割合が争われた際は、刑事記録を取得して、入念に検討することが大切だと思います。
(弁護士・木村哲也)