物損(物的損害)を先に無過失(過失割合0:100)で示談した場合であっても、人損(人身損害)について必ずしも無過失で賠償を受けられるとは限りません。
交通事故の被害に遭った場合に、車両の損傷などの物損と人損(怪我)が同時に発生することが少なくありません。
交通事故で怪我をした場合には、治療期間が長くかかることも多く、物損についての示談が人損よりも先に行われることが多いです。
その際、物損は人損に比べて賠償額が少額であることが多く、車両の修理や買替などをできるだけ早期に済ませるという要請もあることなどから、厳密には被害者の側に一定の過失が認められ得る場合であっても、早期解決のために物損について被害者側の無過失で示談処理が行われることも少なくありません。
しかし、物損について被害者側が無過失で示談処理されたからと言って、人損についての示談もそれに拘束されることはないと考えられています。
よく「物損は被害者側の無過失で示談したのだから、人損も当然そのような前提で解決されるべきだ」、「物損は被害者側の無過失で解決したのに、人損の交渉で過失相殺を主張してくるのはおかしい」という感想を持たれる交通事故被害者の方がいらっしゃいますが、上記のように物損の解決結果が人損の交渉を拘束することはありませんので、事故の状況いかんによっては過失相殺を認めざるを得ないこともあり得るのです。
なお、仮に人損の賠償において過失相殺が行われたとしても、自車の自動車保険の人身傷害保険の適用を受けられるのであれば、過失相殺分を人身傷害保険で填補してもらうことが可能です。
人損について保険会社から過失相殺の主張が出された場合であっても、事故の状況からして過失が認められるのかどうか、人身傷害保険の適用によって過失相殺分の填補を受けられないかなど、冷静に検討していくことが大切です。