後遺障害による逸失利益は、「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という式により算出されます。
労働能力喪失期間とは、後遺障害により労働能力を喪失する期間のことをいいます。
逸失利益の算定にあたっては、労働能力喪失期間の年数そのものではなく、その年数に対応するライプニッツ係数という数値を用います。
ライプニッツ係数とは、逸失利益の賠償では将来の減収をまとめて一括前倒しで受け取るために、労働能力喪失期間の年数に対して3%の中間利息を控除した数値のことです。
そして、この3%とは、民法に定められた法定の利率です。
後遺障害とは、治療を継続してもこれ以上改善しないと診断された場合に認定されるものですから、原則として症状固定時から稼働可能期間の終期とされる67歳までが労働能力喪失期間とされます。
症状固定時の年齢が67歳を超える方に関しては、原則として当該年齢における統計上の平均余命の2分の1が労働能力喪失期間とされます。
また、症状固定時から67歳までの年数が、当該年齢における統計上の平均余命の2分の1よりも短くなる方については、原則として平均余命の2分の1が労働能力喪失期間とされます。
ただし、労働能力喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力等により、上記とは異なる判断がされる場合もあります。
また、軽い後遺障害では、労働能力喪失期間が上記よりも短くなってしまう場合があります。
例えば、むちうちの場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に制限される裁判例が多く見られます。
これは治療や年数経過により症状が回復したり、症状への馴れなどにより、労働能力が回復するからであると説明されています。
ただし、後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきであり、男性会社員のむちうちによる後遺障害(併合14級:頸部痛=14級、腰部痛=14級)につき、左下肢の自動運動ができないという症状を考慮して10年間5%の労働能力喪失を認めた例をはじめ、上記よりも長期の労働能力喪失期間を認めた裁判例もあります。