死亡による逸失利益は、稼働部分(働いて得る収入の部分)と年金部分とがあります。
稼働部分の逸失利益は、次の式で計算します。
稼働部分の逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
基礎収入とは、逸失利益を算定する基礎となる年収のことであり、給与所得者、事業所得者、会社役員、主婦などの家事従事者、幼児・生徒・学生や高齢者といった無職者、失業者など、被害者の方の属性により算出方法が異なります。
生活費控除率は、死亡事故により、将来得られるはずであった収入が失われる反面、将来の生活費の支出がなくなりますので、損害額の算定において、一定割合を生活費分として控除するものです。
生活費控除率は、被害者が一家の支柱であるか、被扶養者は何人か、一家の支柱でなければ男性か女性かなどにより、それぞれの標準値があります。
就労可能年数とは、死亡事故がなければその後も働けたであろう年数のことです。
ライプニッツ係数とは、逸失利益の賠償では将来の減収をまとめて一括前倒しで受け取るために、就労可能年数に対して3%の中間利息を控除した数値のことです。
この3%とは、民法に定められた法定の利率です。
計算の具体例を示します。
例えば、75歳の主婦の方が(令和2年4月1日以後の)交通事故で死亡してしまったというケースがあるとします。
主婦の基礎年収は、女子の平均年収が用いられますから、388万0000円(令和元年の金額を用います。その年により変動があります)となります。
また、主婦の場合の生活費控除率は、30%が標準値です。
そして、高齢者の就労可能年数は当該年齢における統計上の平均余命の2分の1とされ、75歳の場合は平均余命15年(事故当時の数字。その年により変動があります)の2分の1で8年、ライプニッツ係数は7.0197です。
この方のケースで稼働部分の逸失利益を計算すると、次のとおり1906万5505円となります。
3,880,000円×(1-0.3)×7.0197
=19,065,505円