原則として、症状固定後の治療費・手術費を請求することはできません。
症状固定とは、治療を継続してもこれ以上の改善が期待できなくなった状態のことを言います。
そのため、症状固定後の治療は、基本的には必要性のない治療ということになり、加害者が賠償義務を負うことはないのが基本です。
症状固定後に残る症状は、後遺障害の問題として取り扱われることとなり、基本的には後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の問題となります。
そして、治療費・手術費は、原則として、症状固定までのものに限り賠償の対象となるのです。
しかし、症状固定後の治療費・手術費の支出が相当な場合には、請求が認められると考えられています。
例えば、以下のような場合です。
【症状固定後の治療費・手術費の請求が認められる場合】
①生命維持のために治療・手術が必要であった場合
②治療・手術により症状の悪化を防止する必要があった場合
③強度の身体的苦痛を軽減するために治療が必要であった場合
上記のような場合に該当することは、医師作成の診断書・証明書により立証します。
症状固定後の治療費・手術費の請求が認められた裁判例として、以下のようなものがあります。
【大阪地方裁判所平成28年8月29日判決】
四肢麻痺(別表第1・1級1号)の被害者について、症状固定後の約2年6か月の入院治療は後遺障害の内容・程度から必要かつ相当なものであり、主治医が個室利用の必要性を認めていたことから、症状固定後の個室利用料を含む治療費約470万円の請求を認めた。
【東京地方裁判所平成28年9月12日判決】
左肘関節の可動域制限(12級6号)、左鎖骨の変形障害(12級5号)、併合11級の被害者について、症状固定後の治療費約5万円は整形外科医が必要性を認めるリハビリが行われたものであるとして、治療内容・期間等に照らし、請求を認めた。
なお、症状固定後の治療費・手術費を請求できる場合には、必要となる付添看護費、入院雑費、交通費等の請求も認められると考えられます。