追突事故の被害に遭った場合、様々な項目の損害が発生します。
そして、事故と相当因果関係のある(事故により発生することが相当と言える)損害については、賠償請求することが可能です。
以下では、賠償を請求できる主な損害項目をご紹介させていただきます。

人身損害

追突事故により怪我をした場合には、主に次のような損害の賠償を請求することができます。

治療費

入院治療・通院治療にかかった治療費を請求することができます。

入院雑費

入院した場合には、入院雑費を請求することができます。
入院雑費とは、入院中に支出されることが通常想定される日用品・雑貨(寝具・衣類・洗面具・食器類など)の購入費、通信費(電話代・郵便代など)、栄養補給費(医師の指示により牛乳・ヨーグルトなどの摂取を勧められた場合)、家族(お見舞いなど)の通院交通費、文化費(テレビ使用料、新聞・雑誌の購読費など)の総称です。
裁判基準では、入院1日当たり1500円が認められます。

通院交通費

通院のためにかかった交通費を請求することができます。
公共交通機関による交通費、あるいは自家用車で通院した場合には1km15円換算のガソリン代相当額の請求であれば、問題なく支払を受けられることが多いでしょう。
タクシー代の請求は保険会社との間で争いになることもあるため、事前にタクシー利用の必要性を保険会社に説明し、同意を得ておくと安心です。

休業損害

怪我の治療・症状のために仕事ができず、収入が減ってしまうことがあります。
このような収入の減少を、休業損害と言います。
休業損害が発生した場合には、その賠償を請求することができます。

給与所得者が怪我の治療・症状のために有給休暇を使用して休んだ場合にも、「賃金の日額×有給休暇の使用日数」の請求が可能です。
また、家事従事者(主婦・主夫)が家事に支障をきたした場合にも、女性の平均賃金を基礎とする休業損害が認定されます。

傷害慰謝料

傷害慰謝料とは、交通事故により怪我をさせられ、治療を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する損害賠償のことを言います。
入院・通院の期間・日数をもとに傷害慰謝料が算出され、これを請求することが可能です。

後遺障害逸失利益

交通事故による怪我の治療を一通り行っても、一定の症状が残存することがあります。
この場合、自賠責保険会社に後遺障害等級認定の申請をすれば、症状の内容・程度により後遺障害が認定されることがあります。
後遺障害は内容・程度により重い順に1級から14級までがあります。
追突事故で後遺障害等級が認定される場合には、14級または12級の認定となることが多いでしょう。
事故の状況と怪我の内容によっては、より重度の後遺障害等級が認定されることもあります。

後遺障害逸失利益とは、後遺障害により仕事に支障をきたし、将来の収入の減少が発生することによる損害のことを言います。
後遺障害逸失利益は、基礎収入(年収額)に対し、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率(後遺障害により労働能力を失う割合。14級では5%、12級では14%が標準値となります)を掛け、さらに労働能力喪失期間(後遺障害により労働能力を喪失する期間。原則は67歳に達するまでの年数ですが、むち打ちによる14級では5年程度、12級では10年程度とされる例が多いです)に対応するライプニッツ係数(年3%の中間利息を控除した係数)を掛けて算出します。

【後遺障害逸失利益の計算式】
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

後遺障害慰謝料

後遺障害とは、将来にわたって後遺障害が残存することによる精神的苦痛に対する損害賠償のことを言います。
後遺障害等級により標準額があり、裁判基準では14級の場合は110万円、12級の場合は290万円となります。

より重度の後遺障害が残存した場合には、後遺傷害慰謝料は上記よりも高額となります。

死亡事故の場合の賠償金

自動車同士の重大な追突事故、自動車がバイク・トラクター等に追突する事故などでは、被害者が亡くなってしまうことがあります。

死亡事故の場合には、被害者のご遺族は死亡慰謝料(死亡したことによる精神的苦痛に対する損害賠償金)、死亡逸失利益(死亡したことにより喪失した将来の収入の賠償)、葬儀関係費などを請求することができます。

その他

その他、入院・通院に付き添った場合の付添看護費、後遺障害等級認定申請にかかった費用(後遺障害診断書作成費用、画像資料取得費用など)、休業のために職場から提出を求められた診断書の作成費用など、交通事故と相当因果関係がある損害の賠償を請求することができます。

物的損害

交通事故のために自動車・物品が損傷したことによる損害のことを、物的損害と言います。
追突事故の被害に遭った場合には、主に次のような物的損害の賠償を請求することができます。

修理費

車両の修理が相当な場合には、適正な修理費を請求することができます。

車両時価額

修理費が車両時価額を上回ることを、経済的全損と言います。
経済的全損の場合には、車両時価額に買替諸費用を加えた金額の請求に限り認められます。

車両時価額は、有限会社オートガイドの「オートガイド自動車価格月報」(通称「レッドブック」)を参照する取り扱いが一般的です。
また、グーネット、カーセンサーネットなどの中古車情報サイトで同じ車種、年式、グレード、走行距離などの条件を絞って検索し、中古車価格の相場を求める方法もあります。

買替諸費用

経済的全損の場合には、車両時価額のほかに、買替のために必要となった諸費用を請求することができます。

具体的には、登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料、車両整備費用のうち相当額、および自動車税環境性能割の賠償が認められます。
なお、新しく取得した自動車の自動車税種別割、自動車重量税、自賠責保険料の賠償は認められませんが、被害車両の自賠責保険の未経過分(「使用済自動車の再資源化等に関する法律」により適正に解体され、永久抹消登録されて還付された分を除く)の賠償は認められます。
預かりリサイクル預託金等も、裁判例上、賠償が認められるのが通常です。

評価損(格落ち損)

交通事故により車両が損傷した場合、外観や機能に欠陥を残し、または外観・機能は回復したものの修復歴(事故歴)により、商品価値が低下することがあります。
このように車両の価値が低下することを評価損(格落ち損)と言います。

評価損(格落ち損)が発生している場合には、その賠償を請求することができます。
裁判例によると、修理費の10%~30%という形で評価損(格落ち損)の金額を認定する例が多いように見受けられます。

代車使用料

修理または買替に必要な相当期間、代車が必要であったために使用した場合には、その代車使用料の請求が認められます。

代車使用料の請求が認められるためには、公共交通機関・タクシーの利用では不十分であり、被害車両の代わりとなる車両を保有していなかったという「代車使用の必要性」が要件となります。
また、代車使用料が認められる期間は、修理または買替に通常必要となる相当期間に限られます。
被害車両の車種・損傷の程度などにもよりますが、修理で1~2週間程度、買替で1~2か月程度が目安となるでしょう。

なお、代車の種類・グレードは、特段の必要性がなければ、被害車両と同等の種類・グレードでなければならないものではありません。
裁判例では、被害車両と同等の外国産高級車を代車として使用した事案で、国産高級車で十分に代替できると判断し、代車使用料の一部を否認したものがあります。

休車損

営業車が被害に遭った場合には、修理または買替に必要となる相当期間、稼働していれば得られたはずの利益を喪失したことによる損害が発生していれば、その賠償を請求することが可能です。
この損害のことを休車損と言います。

休車損の請求が認められるためには、遊休車(被害車両の代わりとなる車両)を保有していなかったことが必要です。
また、休車損が認められる期間は、修理または買替に通常必要となる相当期間に限られます。
被害車両の車種・損傷の程度などにもよりますが、修理で1~2週間程度、買替で1~2か月程度が目安となるでしょう。

その他

車両の引き揚げ費用・レッカー費用、修理費見積費用・時価額査定費用、積荷・携行品の修理費・時価額など、交通事故と相当因果関係がある損害の賠償を請求することができます。

弁護士にご相談ください

追突事故の被害を受けてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずは交通事故に詳しい弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。

当事務所では、これまでに多くの交通事故・追突事故のご相談・ご依頼をお受けし、解決実績も豊富にございます。
交通事故を得意とする当事務所の弁護士に、ぜひ一度、お気軽にご相談いただければと存じます。

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