交通事故により自動車が損傷した場合、修理をしても修復歴(事故歴)が残るなどのために自動車の価値が低下してしまうことがあります。
このような自動車の価値の低下のことを、評価損(格落ち損)と言います。
1 評価損(格落ち損)の請求が認められるか?
評価損(格落ち損)には、①外観や機能に欠陥を残すもの、②外観・機能は回復したものの修復歴(事故歴)により商品価値が低下するもの、があります。
①外観や機能に欠陥を残すものについては、評価損(格落ち損)の請求が認められやすいと言えます。
②修復歴(事故歴)により商品価値が低下するものについては、ⅰ車種、ⅱ登録年数、ⅲ走行距離、ⅳ損傷の部位・程度、ⅴ購入時の価格、ⅵ中古車市場における通常価格などを考慮し、評価損(格落ち損)の請求が認められるかどうかが判断されます。
裁判例の傾向を見ると、外国車・国産人気車種の場合は初度登録から6年・走行距離6万km以内、それ以外の国産車の場合は初度登録から3年・走行距離4万km以内であれば、評価損(格落ち損)の請求が認められやすいと言えます。
2 評価損(格落ち損)を請求できる立場
評価損(格落ち損)の請求の可否では、自動車の所有者が誰であるかについても問題となります。
この点、一括購入またはローン完済により自動車の所有者が被害者自身となっている場合には、評価損(格落ち損)を請求できる立場にあることとなります。
しかし、ローン完済前で自動車の所有者がディーラーやローン会社となっている場合には、裁判例は否定例(名古屋地方裁判所平成27年12月25日判決など)と肯定例(さいたま地方裁判所平成30年11月29日判決など)に分かれています。
リース車両の場合にも、否定例(横浜地方裁判所平成30年8月10日判決)と肯定例(名古屋地方裁判所平成25年7月29日)に分かれています。
3 評価損(格落ち損)の金額
評価損(格落ち損)が発生している場合に、どの程度の金額の賠償が認められるかが問題となります。
この点、評価損(格落ち損)の金額は、①車種、②登録年数、③走行距離、④損傷の部位・程度、⑤購入時の価格、⑥中古車市場における通常価格などの要素を考慮し、算出されるのが通常です。
裁判例では、修理費の10%~30%という形で評価損(格落ち損)の金額を認定していることが多いです。
ここで、評価損(格落ち損)を請求する際の資料として、ディーラーの下取り査定書(事故車であることによる減価額が表示されることが多いです)、財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書を取得することが考えられます。
これらの資料は、自動車の価値の低下が発生していることを証明する資料として有効性があると言えます。
しかし、裁判所は下取り査定書や事故減価額証明書をそれほど重視しておらず、これらの資料に記載された減価額のとおりに請求が認められることは少ないと考えられます。