平成30年6月2日、NPO法人交通事故110番様による「第10回 法律家のための交通事故実務講座」が東京で開催され、弁護士・山口龍介が受講してきました。
今回の講座では、高次脳機能障害・遷延性意識障害・脊髄損傷といった重度の後遺障害類型と死亡事故をテーマにした講演がなされました。
これらの被害は、交通事故の被害の中でも最も深刻なものであり、適切な賠償を受けるためにも特に慎重な対応が必要となります。
高次脳機能障害のケースでは、後遺障害の立証に高いハードルがあり、専門医の意見書や、日常生活の状況および支障を丁寧に記載した報告資料などをしっかりと揃えて提出することが重要となります。
また、後遺障害等級が認定されたとしても、保険会社側は、介護費用や、逸失利益を争ってくることが多くあります。
そのため、適切な賠償を求めるためにも、後遺障害によって生活にどのような支障が生じているのか、そのためにどのような介護が必要なのか、就労は可能なのか、といった点について、十分な立証をしていくことが必要となります。
遷延性意識障害とは、いわゆる植物状態と呼ばれる状態であり、本人は寝たきりのため常に誰かの介護を必要とします。
そのため、賠償を求める際には、施設で介護をするのか、自宅で介護をするのかといった点や、介護費用あるいは自宅介護のための自宅改造費の金額が問題となります。
また、家族が自宅での介護を希望していても、保険会社側は、自宅での介護は不可能であるとして争ってくることが大半です。
そのため、自宅介護を希望する場合には、自宅介護が可能かつ相当であることなどを裏付ける資料を揃え、十分な立証を行う必要があります。
脊髄損傷のケースでは、全身麻痺により意思疎通がうまく取れないような場合から、下半身に麻痺が生じる場合など、症状は様々です。
そのため、どのような症状があり、その症状により生活にどのような影響が生じ、どのような被害が生じているのか、といった点について、具体的に立証を尽くす必要があります。
死亡事故のケースでは、被害に遭われた方が亡くなっているために、加害者が自分に都合のいいような事故状況を主張してくることがあります。
そのような場合には、事故状況を立証するために、刑事記録を精密に精査したり、事故現場に赴きその状況を観察したり、時には目撃者を探し目撃情報を呼びかけたりする必要があります。
今回の講座では、交通事故の被害の中でも、最も深刻な被害となる上記の各類型について、それぞれ立証にあたってのポイントや、保険会社側(加害者側)からの主張に対する反論のポイントについて解説いただき、より理解を深めることができました。
今回学んだことは、当事務所の弁護士全体で共有して、今後とも、事務所全体として交通事故被害者の方々の救済のために研鑽を続けて参りたいと思います。
(弁護士・山口龍介)