骨折による関節の機能障害とは
交通事故で骨折した場合に、関節の機能障害が発生することがあります。
関節の機能障害とは、腕や足などの関節が全く動かなくなってしまったり、可動域(関節がどの程度挙がったり、曲がったりするかの範囲)が狭まり、関節の動きが制限(可動域制限)されてしまったりする後遺障害のことを言います。
このような関節の機能障害が発生すると、日々の仕事や日常生活に大きな支障となることが通常です。
また、関節の機能障害のケースでは、痛みやしびれといった神経症状を伴うことも多く、その症状は大変つらいものです。
交通事故で骨折の傷害を負い、関節がこれまでのように動かせなくなったという方は、将来の仕事や生活に及ぼす影響を踏まえた十分な補償を受けていただくことが大切です。
そのためには、適正な後遺障害等級の認定を獲得した上で、損害賠償請求の示談交渉や訴訟の手続を確実に進めていかなければなりません。
骨折による関節の機能障害でお悩みの方は、交通事故に精通した弁護士にお早めにご相談いただければと存じます。
関節の機能障害のケースでの等級認定
骨折による関節の機能障害のケースで後遺障害等級の認定を受けるためには、一定の内容・程度の関節の機能障害が存在し、その存在が画像所見等で医学的に裏付けられる必要があります。
まずは、XP(レントゲン)で骨折が確認できることが前提条件となります。
そして、関節の機能障害の医学的原因としては、骨折の癒合不良や関節内の筋組織の壊死、軟部組織の損傷などがあるのですが、これらの医学的原因がXP画像やMRI画像などによって裏付けられることが等級認定の要件となるのです。
骨折による関節の機能障害としては、骨折の部位によって、上肢(肩~腕~手)の機能障害、下肢(股~膝~足)の機能障害、手指の機能障害、足指の機能障害、脊柱の運動障害があります。
以下では、関節の機能障害のうち、上肢の機能障害および下肢の機能障害の内容・程度および等級について、整理させていただきましたので、参考としていただければと存じます。
【上肢の機能障害】
等級 | 障害の内容・程度 |
---|---|
1級4号 | 両上肢の用を全廃したもの |
5級6号 | 1上肢の用を全廃したもの |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
※「3大関節」とは、肩・肘・手の関節を指します。
※「上肢の用を全廃したもの」とは、3大関節が全て強直し、手指の全部の用を廃したものを指します。また、上腕神経叢の完全麻痺も含まれます。
※「関節の用を廃したもの」とは、①関節が強直したもの、②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、③人工関節を挿入置換した関節のうち、患側の可動域角度が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、①患側の可動域角度が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、②人工関節を挿入置換した関節のうち、上記「関節の用を廃したもの」の③に該当しないもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に障害を残すもの」とは、患側の可動域角度が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものを指します。
【下肢の機能障害】
等級 | 障害の内容・程度 |
---|---|
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したもの |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
※「3大関節」とは、股・膝・足の関節を指します。
※「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節が全て強直したものを指し、足指の全部の用を廃したものも含まれます。
※「関節の用を廃したもの」とは、①関節が強直したもの、②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、③人工関節を挿入置換した関節のうち、患側の可動域角度が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、①患側の可動域角度が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、②人工関節を挿入置換した関節のうち、上記「関節の用を廃したもの」の③に該当しないもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に障害を残すもの」とは、患側の可動域角度が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものを指します。
なお、上記の「関節の機能に障害を残すもの」に至らない関節の可動域制限(つまり、関節の可動域角度の制限が3/4に満たないもの)は、関節の機能障害としては、後遺障害等級認定の対象とはなりません。
しかし、骨折を原因とする痛みやしびれなどの神経症状が発生している場合には、骨折による神経障害として、後遺障害等級認定の対象となり得ます。
関節の機能障害のケースでの損害賠償
交通事故による骨折のケースでは、治療期間が1年から2年以上と長期化することも少なくありません。
また、治療が終了しても様々な後遺傷害を残存するケースが多く、その一つが関節の機能障害です。
このように、治療が長期化することの多い骨折の被害事故では、入通院の期間に応じて増加する傷害慰謝料の金額が高額になりやすいという特徴があります。
また、関節の機能障害が残存し、後遺障害等級の認定を得た場合には、認定された等級に応じて1級の2800万円から12級の290万円(裁判基準)の後遺障害慰謝料を請求することができます。
そして、後遺障害によって将来の減収や業務・家事などへの支障が生じることに対し、後遺障害逸失利益(将来の利益の喪失分)を損害として賠償請求することができます。
この後遺障害逸失利益の金額については、被害者の方の収入状況や後遺障害の程度によっても異なりますが、数百万円から数千万円と算定されるのが通常です。
以上のとおり、骨折被害で関節の機能障害が発生するケースでは、賠償金の額が非常に高額なものとなることが通常です。
しかし、保険会社の基本的な態度として、被害者の方ご本人を相手に、裁判基準の満額、あるいはそれに近い金額の支払を提示してくることはまずありません。
裁判基準よりもずっと低い金額での示談提示であることが常なのです。
被害者の方に十分な補償、すなわち裁判基準での満額賠償を受けていただくためには、弁護士が介入して賠償金請求の手続を行うことが確実であると言えます。
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交通事故の被害に遭われた方は、大きな肉体的・精神的苦痛を被ることとなります。
また、今後の治療・検査や、後遺障害等級認定、示談交渉・訴訟などの手続について、不安をお持ちになるのが通常であると思います。
適切に検査・治療や諸手続を進めて、適正な賠償金を獲得するためには、できるだけ早く弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
弁護士への相談が遅れると、不利な流れで手続が進んでしまうことも考えられます。
当事務所では、交通事故被害者の方からのご相談・ご依頼を多数取り扱っております。
経験豊富な弁護士が交通事故被害者の方のお話を丁寧にお聞きして、必要なサポートを提供させていただきます。
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