死亡による逸失利益は、稼働部分(働いて得る収入の部分)と年金部分とがあります。
年金部分の逸失利益は、次の式で計算します。
年金部分の逸失利益=年金額×(1-生活費控除率)×平均余命年数に対応するライプニッツ係数
生活費控除率は、死亡事故により、将来得られるはずであった年金が失われる反面、将来の生活費の支出がなくなりますので、損害額の算定において、一定割合を生活費分として控除するものです。
年金部分の生活費控除率は、稼働部分の生活費控除率よりも高くされる例が多く、経験上60~70%程度とされるのが一般的であると考えられます。
平均余命年数とは、死亡事故当時の年齢における、統計上の平均余命の年数です。
ライプニッツ係数とは、逸失利益の賠償では将来の減収をまとめて一括前倒しで受け取るために、平均余命年数に対して3%の中間利息を控除した数値のことです。
この3%とは、民法に定められた法定の利率です。
計算の具体例を示します。
例えば、75歳の主婦で年金受給者の方が(令和2年4月1日以後の)交通事故で死亡してしまったというケースがあるとします。
この方の年金額は、82万8200円であったとします。
また、裁判所は、生活費控除率を70%と設定したとします。
そして、75歳の平均余命年数は15年(事故当時の数字。その年により変動があります)、ライプニッツ係数は11.9379です。
この方のケースで年金部分の逸失利益を計算すると、次のとおり296万6090円となります。
828,200円×(1-0.7)×11.9379
=2,966,090円