加害者の態度が著しく不誠実と認められる場合には、通常の基準よりも高額の慰謝料が認められることがあります。
ただし、相当悪質なケースに限られます。
裁判基準での慰謝料の金額をご説明させていただくと、加害者の態度が不誠実なので増額できないかといったご質問をいただくことがあります。
確かに、慰謝料の増額が認められる要素のひとつに「加害者の態度」があります。
しかし、慰謝料の増額は、加害者側の悪質性を理由に、被害者に通常よりも手厚い賠償を与えなければ、公平性に欠けると言い得る場合に限って、認められるべきものと考えられています。
したがって、慰謝料の増額が認められるのは、相当悪質なケースに限定されます。
事故現場での態度が反省しているように感じられなかったとか、謝罪や見舞いに来ないといったレベルでは、慰謝料の増額は困難です。
では、具体的にどのような場合に慰謝料の増額が認められるのでしょうか?例えば、①証拠隠滅を図るとか、②事故状況に関して実況見分調書などの関係証拠と明らかに矛盾する不合理な弁解をするとか、③加害者の過失による事故であることが明らかなのに被害者に責任転嫁するとか、④被害者に暴言を浴びせるとか、⑤被害者を救護せずに立ち去る(あるいは、立ち去ろうとする)などといった加害者の相当悪質な態度が存在する場合には、慰謝料の増額が認められると考えられます。
なお、このような加害者の相当悪質な態度が存在することについては、慰謝料の増額を主張する被害者の側で証明する必要があります。
したがって、「言った、言わない」の争いになるような場合には、慰謝料増額の主張を断念せざるを得ないこともあります。
上記のように、慰謝料の増額が認められるケースでの増額の幅は、加害者の悪質な態度の内容にもよるのですが、加害者の過失が100%であるのに、被害者に責任転嫁して「お前が悪い」などと言い放ち、救護せずに立ち去ろうとしたケースで、慰謝料が通常よりも3割増額された事案などが存在します。
慰謝料のことについてご不明のときは、交通事故に詳しい弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。