収入の減少が発生していなくても、「特段の事情」が認められれば、後遺障害逸失利益を請求することができます。
そして、「特段の事情」の有無は、①収入を維持するための本人の努力、②業務の遂行における勤務先の配慮、③将来的に昇給・昇任等に当たって不利益な取り扱いを受けるおそれ、④将来的に現在の業務を続けられなくなるおそれ、⑤将来的に転職する際に職種を制限されるなどの不利益を被るおそれ、⑥業務上の支障、⑦生活上の支障、などの事情を総合的に考慮して判断されます。
そもそも、逸失利益とは、後遺障害による将来の収入の減少・喪失を賠償するものです。
そうすると、基本的には、収入の減少がなければ、後遺障害逸失利益の賠償は認められないということになりそうです。
実際、デスクワークの多い会社員であるとか、公務員であるなどの場合には、交通事故で後遺障害が残っても、直ちには収入の減少が発生しないことも珍しくありません。
しかし、例えば、本人が努力して業務効率の低下を防止しているとか、勤務先が業務負担を軽減するなどの配慮をしているなどの場合に、後遺障害逸失利益の賠償を認めないという結論は妥当ではありません。
また、将来的に昇給・承認等に当たって不利益な取り扱いを受けるおそれがあるとか、現在の業務を続けられなくなるおそれがあるとか、転職する際に職種を制限されるなどの不利益を被るおそれがあるなどの事情があるのに、現時点での収入の減少が発生していないという理由で後遺障害逸失利益の賠償を認めないことは不適切です。
したがって、上記のような様々な事情を考慮して「特段の事情」があると認められれば、収入の減少が発生していなくても、後遺障害逸失利益を請求することができるのです。
このように、収入の減少が発生していなくても、後遺障害逸失利益の賠償を請求できる可能性は十分にあるのですが、保険会社との間では争いになることも少なくありません。
個別の事案で上記の「特段の事情」があると認められ、後遺障害逸失利益の請求ができるかどうかについては、専門的な判断が必要となりますので、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。