自分の車が優先道路を走行していたからといって、一概に自分が無過失であるということにはなりません。
もちろん、交通事故発生の主たる原因は脇道から出てきた相手方にあり、相手方の過失が非常に大きいと言えるのですが、自分が無過失であるとまで言えるかどうかは、詳細な事故状況いかんによって判断されることとなります。
まず、優先道路の意味は、日常用語としては「幅員の広い方の道路に優先性がある」とか、「一方に一時停止の標識がある場合には、一時停止の規制がない方が優先する」などという使われ方をします。
一方で、法律上の優先道路とは、優先道路の道路標識(脇道側に「前方優先道路」の補助標識が設置されていることもあります)がある道路、センターラインが交差点を貫通している道路を指します。
実際には、優先道路の道路標識・脇道側の「前方優先道路」の補助標識がなく、優先道路側のセンターラインが交差点を貫通しており、脇道側には一時停止の道路標識が設置されている、というタイプの優先道が数多く存在します。
【優先道路の標識】
【補助標識】
優先道路を走行する自動車には、確かに走行の優先性があるのですが、自車の走行道路のみに注意を払ってさえいれば足りるのではなく、脇道とはいえ交差道路を通行する自動車にも注意を払わなければなりません(道路交通法36条4項)。
そのため、基本的な過失割合として、優先道路を走行する自動車の側にも、10%の過失があると考えられているのです。
ただし、優先道路側10:脇道側90の基本的な過失割合は、詳細な事故状況いかんによって修正を受ける可能性があります。
優先道路側および脇道側の通常の不注意については、基本的な過失割合の優先道路側10:脇道側90に織り込まれているのですが、時速15km以上の速度超過、飲酒運転、居眠り運転のように、通常の不注意を超える著しい過失・重過失があると認められる場合には、上記の基本的な過失割合から増減修正が行われます。
脇道側にこのような修正要素があるのであれば、優先道路側が無過失となることもあり得ますし、逆に優先道路側にこのような修正要素が認められれば、10%以上の過失を取られることもあるのです。
なお、法律上の優先道路には該当しないものの、「幅員の広い方の道路に優先性がある」とか、「一方に一時停止の標識がある場合には、一時停止の規制がない方が優先する」などの事案でも、優先側10:劣後側90ほどではありませんが、劣後側の過失割合が高くなるのが通常です。
この場合でも、優先側であれば脇道に注意を払わなくてもよいというわけにはいきませんので、基本的には優先側も一定の過失を取られることとなります。
そして、詳細な事故状況いかんによって修正を受ける可能性があることもまた同様です。
過失割合の判断については、専門的な知識・経験が必要な領域です。
過失割合についてお悩みの方は、交通事故を得意とする弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。