示談・裁判上の和解・判決などで賠償額が確定したあとに、事故とは無関係の理由で死亡した場合には、死亡後の分の後遺障害逸失利益を返還しなければならないということはありません。
また、示談・裁判上の和解・判決などで賠償額が確定する前に、事故とは無関係の理由で死亡した場合でも、後遺障害逸失利益は死亡後の分も認められるのが原則です。
ただし、事故の時点で、死亡の原因となる具体的な事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がある場合には、死亡後の分の後遺障害逸失利益が認められなくなります。
最高裁判所平成8年4月25日判決は、「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である」と判断しています。
この裁判例からすると、交通事故で後遺障害を残し、その後、事故とは無関係の理由で死亡した場合でも、原則として、後遺障害逸失利益は死亡後の分も認められるということになります。
ただし、事故の時点で死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がある場合には、死亡後の分の後遺障害逸失利益が認められないということになります。