治療費・手術費の賠償は、原則として症状固定までとなります。
そのため、将来の治療費・手術費は、賠償の対象とならないのが基本です。
しかし、生命維持のために治療・手術が必要である場合や、症状の悪化を防止するために治療・手術を受ける必要がある場合など、症状固定後であっても治療・手術の必要性があれば請求できることがあります。
そして、将来の治療費・手術費の請求が可能な場合には、将来の付添看護費、入院雑費、交通費等の請求も認められることがあります。
将来の治療費・手術費を請求するためには、医師作成の診断書・証明書により将来の支出の必要性や金額を立証する必要があります。
また、将来の治療費・手術費の計算では、将来発生する費用について一括払いを受けることを考慮し、中間利息の控除(ライプニッツ係数を使用した計算)を行うこととなります。
以下では、将来の治療費・手術費の請求が認められた裁判例をご紹介させていただきます。
【大阪地方裁判所平成27年9月4日判決】
意識障害、全介助(別表第1の1級1号)の被害者(60歳代前半の女性)について、平均余命までの将来の治療費約7147万円、および将来の入院雑費として日額1500円を平均余命まで認めた。
【京都地方裁判所平成27年5月18日判決】
高次脳機能障害(5級)の被害者(症状固定時32歳の男性)について、症状固定後もてんかん指導、血液科学検査、精神分析療法などを受ける必要があることから、平均余命46年間にわたる将来の治療費約201万円を認めた。
【さいたま地方裁判所平成23年11月18日判決】
左大腿骨頚部骨折後の左股関節人工骨頭置換(10級11号)の被害者(35歳の女性)について、将来の左股関節人工骨頭置換手術の手術費約53万円、および将来の付添看護費約23万円を認めた。
【名古屋地方裁判所平成30年3月20日判決】
上顎右1歯の外傷性歯牙脱臼、上顎左1歯の外傷性歯牙破折、上顎右2歯の外傷性歯牙破折等の被害者(事故発生時15歳の高校生女子)について、平均余命までの将来の歯科補綴(ブリッジ)の処置費用約66万円を認めた。