「基礎収入(日額)×休業日数」により計算するのが基本です。
自営業者の基礎収入は、原則として、交通事故発生の前年の申告所得額を採用します。
年により所得額に相当の変動がある場合には、数年分の平均額を採用することもあります。
そして、申告所得額に固定経費額(従業員の給与、店舗の家賃、光熱費の基本料金、損害保険料など)を加算した金額が基礎収入の年額となります。
そのうえで、基礎収入の年額を365日で割った金額が、基礎収入の日額となります。
配偶者など近親者とともに自営業を営んでいる場合には、被害者の寄与による部分だけが基礎収入となります。
被害者の寄与割合は、具体的な役割分担、稼働状況、業種などの個別事情を考慮し、判断することとなります。
開業直後であり、まだ確定申告をしていない場合には、交通事故発生前後の利益状況や、前職の所得などを考慮し、基礎収入を検討することとなります。
賃金センサス(政府による統計)の平均賃金を参照すべき事案もあります。
自営業者の事案では、申告所得額よりも実際の所得額の方が多いという主張がなされることがあります。
このような場合には、実際の所得額を証明することができれば、その金額が基礎収入と認定される可能性があります。
しかし、申告外の所得の主張について裁判所は厳しい目で見る傾向にあり、確実性のある高度の証明が必要であると考えられています(大阪地方裁判所平成15年12月14日判決など)。
業務過程で作成される会計帳簿、伝票、領収証・レシートの控えなどの証拠により、収入、原価、諸経費などについて、十分な立証が必要となるでしょう。
休業日数は、実際に休業した日数です。
入院している場合には、入院日数が原則として休業日数に算入されます。
通院期間については、傷病の内容・程度や事業の内容などを考慮し、休業が相当であると考えられる場合には、休業日数に算入されます。
なお、完全休業ではないものの通院日等は営業時間を短縮した場合、通院日等の業務を外注することにより失客を回避した場合、時期により業務内容・収益状況に変動がある場合などもあり、個別の事案に応じた特殊な計算が必要となる事例もあります。