基礎収入は、事故前年の収入額をもとに計算されるのが原則です。
しかし、30歳未満程度の若年者の場合には、賃金センサス(政府による賃金統計)の全年齢平均額を採用することが多いです。
全年齢の平均賃金は、若年者の年齢別平均賃金よりも高くなります。
若年者の場合、事故時点の収入にはばらつきがあり、将来的に様々な職業に就く可能性がありますし、将来の増収の可能性があると通常は考えられます。
例えば、22歳の被害者が45年間にわたり労働能力を喪失する場合に、事故前年の収入額や20歳~24歳の年齢別平均賃金をもとに、45年間の逸失利益を計算するのは不合理です。
そのため、上記のように、全年齢の平均賃金が採用されることが多いのです。
一方で、14級のむち打ちで労働能力喪失期間が5年の場合など、労働能力喪失期間が比較的短期間に制限されるときは、事故前年の収入額や年齢別平均賃金を採用することが多いです。
ただし、労働能力喪失期間が10年~20年の場合など、比較的長期間にわたる場合には、将来の増収の可能性を考慮し、各年齢に応じて段階的に計算していくことが考えられます。
例えば、京都地方裁判所平成24年では、症状固定時26歳で労働能力喪失期間が15年の事案で、25歳から29歳の平均賃金(約427万円)、30歳から34歳の平均賃金(約530万円)、35歳から39歳の平均賃金(約634万円)、40歳から44歳の平均賃金(約776万円)を、3:5:5:2の割合で加重平均した金額(約577万円)をもとに基礎収入を算出しました。
【計算式】
(427万円×3年+530万円×5年+634万円×5年+776万円×2年)÷(15年)=577万円
なお、上記の京都地方裁判所の判決では、具体的には、実際の収入額が25歳から29歳の平均賃金の72%であったため、加重平均した金額の72%を基礎収入と認定しています。
将来の増収の可能性を考慮し、実態に即した基礎収入を認定することが合理的な判断であると考えられます。