交通事故により高次脳機能障害・遷延性意識障害(植物状態)などの重度の後遺障害(1級や2級)が残った場合には、自宅・自動車のバリアフリー化が必要となることがあります。
例えば、自宅の出入口・浴室・トイレ等の改造費、ベッド・椅子・手すり等の設置・購入費、自動車の改造費等が考えられます。
この点、自宅・自動車の改造費等(バリアフリー化)は、後遺障害の内容・程度等に照らし、必要性が認められる場合には、実費相当額の賠償が認められます。
ただし、必要以上に高級なものとなっている場合や、家族にとっても便益がある場合などには、賠償額が減額されることもあります。
賠償が認められる金額は、事案によりかなり幅があります。
自宅の改造費については500万円~1000万円程度まで、自動車の改造費等については100万円程度までを認めている裁判例が多いように見受けられます。
なお、耐用年数が限られるために買替等が必要となる場合には、将来の改造費等を請求することができます。
裁判例では、自動車の耐用年数は6年程度とされることから、平均余命までの自動車の改造費等が認められることが多いです。
【鹿児島地方裁判所平成28年12月6日判決】
高次脳機能障害、四肢運動失調、膀胱直腸障害等(別表第1の1級1号)の被害者(女性・症状固定時60歳)について、改造プランは理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーの助言等に基づいてされているため合理的であり、被害者以外の利便性が向上したとは認められないとして、車庫からのホームエレベーターの設置費用、和室を洋室に改造する費用、障害者用トイレの設置費用、脱衣所・システム浴室設置費用の合計約997万円、およびホームエレベーターのメンテナンス費用約64万円を認めた。
【名古屋地方裁判所令和2年11月20日判決】
四肢麻痺および高次脳機能障害(別表第1の1級1号)の被害者(女性・症状固定時54歳)について、福祉仕様と通常仕様の車両価格の差額、車椅子電動ウインチ・ヘッドサポートクッション取付費用の合計約78万円を、耐用年数6年として5回分の合計約257万円(中間利息控除による計算)を認めた。
また、後遺障害1級や2級に至らない後遺障害(3級以下)の場合でも、必要性・相当性があれば自宅・自動車の改造費等の請求が認められることがあります。
【神戸地方裁判所平成27年12月3日判決】
左大腿骨骨幹部骨折後の左股関節機能障害(12級7号)により布団で就寝できなくなった男性(症状固定時20歳)について、和室を洋室に改造する費用およびベッド・低反発マット購入費用の合計約31万円を認めた。
【大阪地方裁判所平成21年2月16日判決】
右腓骨神経麻痺による右足関節の機能障害(10級11号)、右足第1・第2指機能障害(11級10号)、右手関節機能障害(12級6号)の男性(事故発生時26歳)について、自動車に障害者用の左足ペダルを取り付ける必要があるとして、購入価格約14万円を、耐用年数6年として7回分の合計約43万円(中間利息控除による計算)を認めた。