費目間流用の禁止により、賠償額が増加する可能性があります。
例として、被害者の過失が2割であり、治療費が100万円、休業損害・慰謝料が120万円という事例をもとにご説明いたします。
この場合、被害者が加害者側に対して請求できる金額は、治療費80万円(100万円の8割)、休業損害・慰謝料が96万円(120万円の8割)となります。
そして、労災保険の使用なく加害者側の保険会社から病院へ100万円の治療費が直接支払われた場合、治療費については20万円(100万円-80万円)の超過払いが発生していることとなります。
そのため、この場合に被害者が加害者側の保険会社から受け取れる賠償額(休業損害・慰謝料)は、76万円(96万円-20万円)ということになります。
これに対し、労災保険から100万円の治療費が支払われた場合には、費目間流用の禁止というルールにより、超過分の20万円を休業損害・慰謝料(治療費以外の損害項目)から差し引くことは許されません。
その結果、被害者は、96万円の賠償額(休業損害・慰謝料)を加害者側の保険会社から受け取ることができるのです。
このように、労災保険を使用することにより、受け取れる賠償金が増額される可能性があります。