交通事故の前は徒歩や自転車・自家用車で通勤・通学・買い物などをしていたところ、交通事故による受傷のため公共交通機関等による交通費を支出しなければならなくなることがあります。
交通事故の受傷による身体の不自由や移動上の安全確保のために公共交通機関を利用した場合には、必要性・相当性が認められる範囲で運賃の請求が認められます。
そして、公共交通機関の運賃はそれほど多額ではないため、必要性・相当性が争われる可能性は低いと考えられます。
ただし、通勤・通学は必ず本人が行かなければならないのに対し、買い物については家族による代替可能性が問題とされることはあり得るでしょう。
一方で、タクシーを利用する場合には、公共交通機関の運賃と比較してタクシー代が高額であることから、必要性・相当性が争いになる可能性が高く、注意が必要です。
タクシー代の請求が認められるためには、受傷の内容および程度、交通の利便性などを考慮し、タクシーを利用することが必要・相当と言える場合でなければなりません。
実際にタクシー代の請求が認められた裁判例を、以下でご紹介させていただきます。
なお、タクシー代を請求する場合には、タクシーを利用したことの証拠資料として、領収証を保管しておく必要があります。
【東京地方裁判所平成17年2月15日判決】
歩行のために松葉杖が必要となった被害者が職場復帰訓練のためにタクシーで通勤した事案で、タクシー代19万8640円の賠償を認めた。
【大阪地方裁判所平成20年3月14日判決】
通勤および交通事故と無関係の歯科通院について、交通事故がなければ通勤・歯科通院についてタクシーを利用する必要はなかったとして、タクシー代の賠償を認めた。
【京都地方裁判所平成23年9月6日判決】
左膝前十字靭帯損傷等(14級)の大学生(20歳男性)について、医師からできるだけ公共交通機関を使用しないように指示されていたことなどから、通学のためのタクシー代約9万円の賠償を認めた。