自動車の全損には、物理的全損と経済的全損の2つがあります。
物理的全損とは、損傷の程度が大きいため、技術的に修理が不可能なことを言います。
経済的全損とは、修理費が事故車両の時価額を上回ることを言います。
よく問題となるのは、経済的全損の場合の賠償です。
全損の場合に法律上賠償が認められるのは、車両時価額および買替諸費用となります。
経済的全損の場合には、修理費の賠償を請求することはできないのが原則です。
また、新車の購入費用の賠償を請求することもできません。
ただし、加害者が加入する自動車保険に対物超過修理費特約が付帯されている場合には、車両時価額を超える修理費の補償を受けられることがあります。
車両時価額の評価は、オートガイド自動車価格月報(レッドブック)を参照する方法が一般的にとられています。
また、インターネットの中古車販売サイトにより、事故車両の車種・年式・型式・走行距離と類似の中古車の市場価格を調査し、参考にする方法をとることも多いです。
登録年数がおおむね10年以上経過している自動車については、レッドブックや中古車販売サイトで参考となる価格を調べることが難しいため、新車価格の10%を車両時価額とする取り扱いが一般的にとられています。
買替諸費用としては、登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料、車両整備費用のうち相当額、および自動車税環境性能割の賠償が認められます。
なお、新しく取得した自動車の自動車税種別割、自動車重量税、自賠責保険料の賠償は認められませんが、事故車両の自賠責保険の未経過分(「使用済自動車の再資源化等に関する法律」により適正に解体され、永久抹消登録されて還付された分を除く)の賠償は認められます。
預かりリサイクル預託金等も、裁判例上、賠償が認められるのが通常です。