車の助手席・後部座席に乗っていた場合、運転をしていたわけではないため基本的には落ち度がなく、過失相殺はされないのが原則です。
しかし、被害者と運転者とが身分上ないし生活関係上一体をなすとみられる関係にある場合、運転者に過失があれば「被害者側の過失」として過失相殺されます。
このように「被害者側の過失」の法理により過失相殺されるのは、身分上・生活関係上の一体関係が認められる場合です。
身分上・生活上の一体関係があるとされるのは、例えば、夫婦、内縁関係にある者、未成年の子と親、同居して経済的に一体関係のある兄弟姉妹などが挙げられます。
これらの関係にある者の過失は「被害者側の過失」として過失相殺の対象となると考えられます。
一方で、友人・知人・同僚などの関係に過ぎない場合、交際・婚約の段階にとどまる場合、親族であっても別居・別生計の場合などには、過失相殺が否定されると考えられます。
また、裁判例では、保育士が保育園に通う子どもを監護していた事案で、保育士の過失を考慮しなかった(保育士の過失に基づく過失相殺を否定した)ものがあります。