交通事故による損害賠償を請求する権利は、一定期間行使しなければ消滅してしまいます。
これを「消滅時効」と言います。
 
 
 

交通事故による損害賠償を請求する権利は、一定期間行使しなければ消滅してしまいます。
これを「消滅時効」と言います。

1 消滅時効の期間

消滅時効の期間は、3年です。
後述する消滅時効の起算点から3年間、損害賠償請求権を行使しなければ、権利が失われてしまいます。

2 消滅時効の起算点

消滅時効の起算点は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時です。

被害者とは交通事故で怪我をした人のことであり、死亡事故の場合には相続人等を指します。
法定代理人とは、未成年の被害者の親権者、成年後見人等のことです。

損害を知った時とは、人身事故の場合には症状固定時を意味します。
症状固定とは、交通事故による怪我がそれ以上治療を続けても改善が見込まれない状態となったことを言います。
事故発生時ではなく症状固定時が消滅時効の起算点とされるのは、症状固定に至らなければ治療費・休業損害・慰謝料等の金額が確定せず、後遺障害の有無・内容も分からないためです。

加害者を知った時とは、損害賠償請求が事実上可能な程度に知ることを言います。
通常は、加害者の住所・氏名等を知った時を意味します。

3 後遺障害等級認定・異議申立手続の関係

症状固定後、後遺障害等級認定・異議申立手続を行った場合、それぞれ申請をしてから結果が出るまでに数か月を要します。
特に異議申立てを行う事案では、最終的な結果を得るまでに症状固定から1年以上を経過するというケースも少なからず発生します。
そして、異議申立てまでに時間をかけすぎると、最終的な結果を得て損害賠償請求に着手するのが症状固定から3年以上経過後になる、ということも起こり得ます。

裁判例では、異議申立てにより後遺障害非該当から12級に変更された事案について、消滅時効の起算点は12級認定時ではなく、症状固定時であると判断されています(最高裁判所平成16年12月24日判決)。
このような裁判例を踏まえれば、後遺障害等級認定・異議申立手続は、できる限り速やかに行う必要があります。

4 まとめ

以上から、交通事故の被害者は、加害者の住所・氏名等を知り、かつ症状固定に至ってから、3年以内に損害賠償請求を行う必要があります。

交通事故に関するQ&A一覧

No Q&A
1 弁護士に依頼するかどうかで、損害賠償金額が変わってきますか?
2 示談交渉のほかには、どのような解決方法がありますか?
3 まだ治療中ですが、弁護士に依頼するメリットはありますか?
4 後遺障害とは?
5 過失相殺とは?
6 むちうちとは?
7 むちうちは後遺障害になりますか?
8 後遺障害等級の認定を受けると、就職などで不利になりませんか?
9 裁判は依頼者の側も手間がかかりますか?
10 裁判はどのくらい時間がかかりますか?
11 むちうちで後遺障害非該当、14級、12級は、どういう基準で区別されますか?
12 むちうちで後遺障害14級と12級とでは、賠償額にどのくらい開きがありますか?
13 後遺障害等級とは?
14 症状固定とは?
15 保険会社から治療費や休業損害の支払の打ち切りを通告された場合、何か対応策はありますか?
16 休業損害とは?
17 素因減額とは?
18 加害者に弁護士費用を請求できますか?
19 後遺障害による逸失利益とは?
20 後遺障害による逸失利益の計算方法は?
21 労働能力喪失率とは?
22 労働能力喪失期間とは?
23 ライプニッツ係数とは?
24 死亡による逸失利益とは?
25 死亡逸失利益の稼働部分の計算方法は?
26 死亡逸失利益の年金部分の計算方法は?
27 生活費控除率とは?
28 就労可能年数とは?
29 慰謝料とは?
30 傷害慰謝料とは?
31 後遺障害慰謝料とは?
32 死亡慰謝料とは?
33 弁護士費用特約とは?
34 むちうちで画像所見があれば、必ず12級が認定されますか?
35 弁護士に相談・依頼するタイミングはいつがいいですか?
36 加害者に謝罪を求めることはできますか?
37 高次脳機能障害とは?
38 高次脳機能障害の後遺障害等級認定のポイントは?
39 高次脳機能障害のケースで被害者の家族が準備すべきことは?
40 加害者の態度が不誠実な場合には、通常よりも慰謝料が増額されますか?
41 悪質な事故の場合には、通常よりも慰謝料が増額されますか?
42 解決方法としては、示談交渉と裁判のどちらを選択するべきですか?
43 主婦の休業損害・逸失利益は認められますか?
44 交通事故の被害に遭ったら警察に連絡しなければなりませんか?
45 交通事故で怪我をしたら警察に診断書を提出して人身事故扱いにしてもらうべきですか?
46 骨折のケースでは、どのような後遺障害が想定されますか?
47 加害者が自動車保険に加入していない場合でも補償を受けられますか?
48 加害者の運転車両がフォークリフトであり、自賠責保険や自動車保険に加入していないようですが、きちんと補償を受けられますか?
49 自賠責保険とは?
50 政府保障事業とは?
51 自動車保険(任意保険)とは?
52 人身傷害保険とは?
53 搭乗者傷害保険とは?
54 無保険車障害特約とは?
55 運行供用者責任とは?
56 使用者責任とは?
57 車両保険とは?
58 交通事故の被害に遭って物損(物的損害)を先に無過失(過失割合0:100)で示談した場合、人損(人身損害)についても無過失で賠償を受けることができますか?
59 収入の減少がなくても後遺障害逸失利益は認められますか?
60 交通事故で顔や身体に傷痕(外貌醜状)が残った場合、後遺障害逸失利益は認められますか?
61 保険会社がこちらの要求に応じてくれない場合、加害者本人に対して直接請求しても構いませんか?
62 自分の車が停止しているところに相手方の車がぶつかってきたのに、保険会社からは自分にも過失があると言われました。自分には過失はないのではないですか?
63 自分の車が優先道路を走行中、脇道から出てきた相手方の車に衝突されました。保険会社からは自分にも過失があると言われていますが、納得できません。自分は無過失ではないでしょうか?
64 交通事故で後遺障害を残し、その後、事故とは無関係の理由で死亡した場合、後遺障害逸失利益は死亡後の分も認められますか?
65 交通事故で後遺障害を残し、その後、事故とは無関係の理由で死亡した場合、将来の介護費は死亡後の分も認められますか?
66 治療中(症状固定前)に、事故とは無関係の理由で死亡した場合、後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料を請求することはできますか?
67 兼業主婦の休業損害はどのように計算しますか?
68 兼業主婦の逸失利益はどのように計算しますか?
69 学生の逸失利益はどのように計算しますか?
70 無職でも休業損害・逸失利益は認められますか?
71 近親者固有の慰謝料・遺族固有の慰謝料とは?
72 私は死亡事故の被害者と同居し、世話をしてきました。被害者の法定相続人は私だけではないのですが、私は寄与分を主張して法定相続分を超える損害賠償金を受け取ることができるのでしょうか?
73 死亡事故の被害者から生前贈与を受けた法定相続人がいます。その法定相続人は、特別受益があるため法定相続分を下回る損害賠償金しか受け取ることができないのでしょうか?
74 現在は別の弁護士に依頼していますが、今から他の弁護士に依頼することはできますか?
75 医師から手術の話をされていますが、手術を受けるかどうか迷っています。手術を受けなかった場合、後遺障害の認定や損害賠償金の額に影響しますか?
76 症状固定後の治療費・手術費を請求することはできますか?
77 交通事故による後遺障害のため、将来にわたって治療・手術が必要となります。将来の治療費・手術費の請求は認められますか?
78 交通事故による後遺障害のため、将来にわたって介護が必要となります。将来の介護費の請求は認められますか?
79 自営業者の場合、逸失利益の基礎収入はどのように認定されますか?
80 自営業者の場合、休業損害はどのように計算しますか?
81 弁護士を選ぶ際には何を基準にすればよいのでしょうか?
82 会社・法人の役員の場合、逸失利益の基礎収入はどのように認定されますか?
83 外国人が交通事故の被害に遭った場合、適用される法律、逸失利益、慰謝料はどのように取り扱われますか?
84 若年者(30歳未満程度)の場合、逸失利益の基礎収入はどのように認定されますか?
85 後遺障害逸失利益の労働能力喪失率は、職業によって変わってきますか?
86 後遺障害による自宅・自動車の改造費等(バリアフリー化)の請求は認められますか?
87 怪我や後遺障害のために転居が必要となった場合、転居費用、仮住居費、家賃差額等の請求は認められますか?
88 後遺障害により車椅子、義手・義足、眼鏡等が必要となる場合、購入費用の賠償請求は認められますか?
89 給与所得者の休業損害は、どのように計算しますか?
90 交通事故のあと退職した場合、休業損害は認められますか?
91 被害者側の自動車保険の保険会社は、示談交渉をしてくれないのでしょうか?
92 交通事故の被害者が自己破産をする場合、損害賠償金はどうなりますか?
93 労災保険はどのような場合に使用するのがよいのでしょうか?
94 勤務中または通勤中の交通事故の場合、労災保険と健康保険はどちらを使うのがよいでしょうか?
95 高額療養費制度とは?
96 労災保険から治療費が支払われた場合のメリットは?
97 労災保険を使用すれば、労災保険料が上がるのでしょうか?
98 ひき逃げの被害に遭い、加害者が誰か分かりません。保険金を受け取ることはできるのでしょうか?
99 傷害慰謝料の算定における「通院が長期」とは?
100 整骨院での施術費を請求することはできますか?
101 交通事故で入院した場合、個室使用料(差額ベッド代)の請求は認められますか?
102 家族が入院に付き添った場合、入院付添費・休業損害・交通費・宿泊費は賠償してもらえますか?
103 家族が通院に付き添った場合、通院付添費・休業損害・交通費は賠償してもらえますか?
104 タクシーによる通院交通費の請求は認められますか?
105 家族による見舞い・駆けつけのための交通費の請求は認められますか?
106 治療中の通勤・通学・買い物など日常生活のための交通費の請求は認められますか?
107 評価損(格落ち損)に対する賠償は認められますか?
108 交通事故により自動車が全損になった場合、賠償はどうなりますか?
109 シートベルト未装着の場合、過失相殺されますか?
110 私は助手席・後部座席に乗っていただけなのですが、過失相殺されるのでしょうか?
111 刑事裁判の被害者参加制度とは?
112 裁判基準による賠償金を受け取るためには、必ず裁判をしなければならないのでしょうか?
113 裁判には出席する必要はありますか?
114 業務中の交通事故で弁護士費用特約を使うことはできますか?
115 弁護士費用特約を使用すれば、保険等級は下がりますか?
116 成年後見制度とは?
117 消滅時効とは?