損害賠償の費目
脊髄損傷のケースでの損害賠償の費目は、他の後遺障害のケースと同様、傷害部分と後遺障害部分に大きく分かれます。
傷害部分については、治療費、入院雑費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料(傷害慰謝料)などがあります。
後遺障害部分については、後遺障害慰謝料、逸失利益などがあります。
後遺障害慰謝料の額や逸失利益における労働能力喪失率は、基本的には、認定を受けた後遺障害等級に応じて算定されます。
後遺障害慰謝料について
脊髄損傷で認定されうる各等級と後遺障害慰謝料の額について、自賠責基準と裁判基準を比較して整理したのが、次の表になります。
なお、裁判基準の額は、事案に応じて一定の調整がなされることがあります。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 裁判基準 |
---|---|---|
第1級 | 1600万円 | 2800万円 |
第2級 | 1163万円 | 2370万円 |
第3級 | 829万円 | 1990万円 |
第5級 | 599万円 | 1400万円 |
第7級 | 409万円 | 1000万円 |
第9級 | 245万円 | 690万円 |
第12級 | 93万円 | 290万円 |
労働能力喪失率について
脊髄損傷で認定されうる各等級と逸失利益の算定の基礎となる労働能力喪失率を整理したのが、次の表になります。
後遺障害等級 | 症状の程度、就労可能の程度 | 労働能力喪失率 |
---|---|---|
第1級 | 生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に介護を要するもの | 100% |
第2級 | 生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの | 100% |
第3級 | 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能だが、労務に服することができないもの | 100% |
第5級 | きわめて軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 79% |
第7級 | 軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 56% |
第9級 | 通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの | 35% |
第12級 | 通常の労務に服することはできるが、多少の支障が生じる場合があるもの | 14% |
脊髄損傷のケースで特に問題になる損害について
脊髄損傷のケースで特に問題になる損害は、①自宅改築・改造費や新築費、②車両改造・購入費、③将来の介護費です。
その詳しい内容は、次のとおりです。
①自宅改築・改造費や新築費
脊髄損傷のケースでは、後遺障害によって生じる日常生活上の困難をできる限り回避するために、車椅子を使えるように自宅の段差を解消したり、浴室やトイレを介護用に改造したりするなど、自宅を改築・改造あるいは新築し、あるいは移動に便利なように設備を設置する必要が生ずることが多いです。
この場合、現実に自宅を改築・改造、あるいは購入するのに支出した費用がそのまま損害額として認められる場合もありますが、多くの裁判例では、後遺障害の程度や生活環境などを考慮して、改築等の必要性、支出額の相当性が認められる範囲で、賠償が認められています。
被害者以外の家族も改築等によって利益を得ている場合には、一定金額が減額される可能性もあります。
被害者がもともと賃貸住宅に暮らしていて、改築・改造自体ができないときは、介護に適した住宅に転居することも十分に考えられるところです。
この場合には、転居費用に加えて、転居に伴い増額した家賃が損害として認められることもあります。
②車両改造・購入費
被害者が自立した生活を営むためには、上肢だけで運転ができるように車両を改造し、あるいは車椅子のまま乗れる車両が必要となります。
車両の場合も、家屋と同様に、後遺障害の程度や生活環境などを考慮して、改造等の必要性、支出額の相当性が認められる範囲で、賠償が認められています。
また、被害者以外の家族も乗る場合には、その家族の利便性を考えて、車両購入費の一部のみを損害とする場合もあります。
なお、あまりに重度な後遺障害のため、被害者が頻繁に外出する環境にないということを重視して、車両の改造費を損害として認めなかった裁判例もあります。
③将来の介護費
後遺障害のため、在宅で親族や職業介護人の介護が必要な場合は、将来の介護費が損害として認められる可能性があります。
将来の介護費は、介護者が近親者介護人か職業介護人かを区別し、さらに具体的な介護の態様を考慮して算定されます。
算定式としては、「1年間の介護費の評価額×症状固定時における平均余命に対応するライプニッツ係数」で計算されます。
1年間の介護費の評価額は、近親者介護人の場合は、常時介護を要する場合で日額8000円が一応の基準とされていますが、具体的な介護の態様を考慮して、増額されることもあります。
職業介護人の場合は、必要かつ相当な実費として、8000円から2万5000円程度の範囲で認められています。
また、症状固定の時点では近親者による介護がなされている場合でも、例えば被害者が若年の場合では、近親者介護人が67歳(就労可能年数)に達するまでは近親者介護の介護料、その後は職業介護人の介護料で算定する場合もあります。
介護が要件とされていない3級以下の後遺障害等級であっても、排尿・排便、食事、入浴、体位変換、衣服着脱などの日常生活に支障がある場合には介護費用が認められる傾向にあります。
もっとも、将来労務に服することが困難であっても日常生活動作に支障がない場合には、介護費用は否定される傾向にあります。
したがって、3級よりも低い等級では、介護費用が認められる可能性は低いといえます。
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