交通事故に遭われた被害者の方がお亡くなりになった場合、被害者のご遺族が、加害者に対して慰謝料などの損害賠償を請求していくことになります。
ご遺族が請求する慰謝料には、①亡くなった被害者ご本人の慰謝料と、②ご遺族の慰謝料の2種類のものが含まれることが一般的です。
①の亡くなった被害者ご本人の慰謝料については、死亡事故の場合でも、亡くなった被害者ご本人は加害者に対して慰謝料請求の権利を有するものと考えられています。
そのため、被害者のご遺族は、その慰謝料請求の権利を相続し、加害者に対して、慰謝料を請求していくことになります。
②のご遺族の慰謝料については、法律上、被害者の近親者(近しい関係の方)には、近親者固有(「固有」とは上記①とは別個という意味です)の慰謝料が認められています。
法律上規定されている近親者は、被害者の父母、配偶者、子であり、これらの方々であれば、固有の慰謝料請求の権利が認められます。
これらの方々以外の近親者、例えば、内縁関係にある方や兄弟姉妹等といった関係にある方の場合には、被害者との間に特別に親密な関係にあるときには、固有の慰謝料請求の権利が認められることがあります。
死亡慰謝料の基準
死亡慰謝料の裁判基準の金額については、次の表のとおりです。
亡くなった被害者 | 裁判基準の金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
それ以外の場合 (独身者、子供等) |
2000万円~ 2500万円 |
※一家の支柱とは、その被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます。
※この表による基準額は、被害者ご本人およびご遺族の慰謝料を合わせたものです。
慰謝料の増額理由
加害者の過失が重大であるとか、事故態様が悪質である場合や、加害者の事故後の態度が極めて不誠実であるなどの場合には、慰謝料の増額が認められることがあります。
例えば、飲酒運転、ひき逃げ、無免許運転、極端なスピード違反が認められる場合や、加害者が証拠隠滅を行う、責任が明らかであるのに虚偽の供述をするといった場合には、慰謝料の増額が認められます。
具体的な裁判例としては、次のようなものがあります。
●常習的に飲酒運転を行っていた加害者が、事故当日も飲酒運転により縁石にぶつかりながら蛇行運転し、料金所の職員から注意されても無視して運転を続け、サービスエリアでも持ち込んだウイスキーを飲酒するなどしてトラックを運転し、高速道路上で渋滞により停車していた自動車に追突し炎上させ、後部座席に乗車していた3歳と1歳の姉妹が、両親の面前で焼死した事故について、被害者それぞれについて3400万円(本人分2600万円、父母各400万円)の慰謝料を認めた事例(東名高速道路飲酒運転事故。東京地裁平成15年7月24日判決)。
●てんかん発作による意識喪失下で運転されたクレーン車が通学のため歩道を歩行していた9歳から11歳の児童に衝突し、6名が死亡した事故について、①加害者はてんかんの診断を受け、抗てんかん薬を処方どおりに服用しないときには必ずてんかんの発作を起こしていたこと、②抗てんかん薬を処方どおりに服用しなかったために、運転中に起きたてんかん発作に起因する交通事故を5回も引き起こしており、その中には人身事故も含まれており、禁固1年4月執行猶予4年の有罪判決を受けたこと、③その執行猶予期間中にも運転を続け接触事故を起こした上に、クレーン車の免許を取得したこと、④医師からも自動車や重機等の運転をしないように厳しく注意されていたところ、医師に対してはクレーン車を運転していることを隠ぺいし続けていたこと等の事情から、各児童について、3000万円(本人分2600万円、父母各200万円)の慰謝料を認めた事例(宇都宮地裁平成25年4月24日判決)
●30歳会社員男性の死亡事故について、加害者は無免許かつ酒気帯びで車両を運転していたこと、道路を横断歩行中の被害者に衝突した後、被害者を車底部に巻き込んだまま、加害者は逃走し、被害者を車底部に引きずった状態のまま約2.9kmにわたって時速40~50kmで車両を走行させ、その結果、被害者は、頭蓋骨骨折等の傷害を負い外傷性ショックにより死亡したこと等の事情から、4000万円(本人分3500万円、妻子各250万円)の慰謝料を認めた事例(大阪地裁平成25年3月25日判決)
●54歳の男性の死亡事故について、加害者が酒酔い運転により車両を対向車線に進入させたために生じた事故であること、加害者は事故後も携帯電話をかけたり小便をしたり、煙草を吸ったりするだけで、救助活動を一切しなかったこと、加害者は捜査段階で、被害者がセンターラインを先にオーバーしてきたなどと供述したこと等を考慮して、3600万円(本人分2600万円、妻と母各500万円)の慰謝料を認めた事例(東京地裁平成16年2月25日判決)
●68歳年金生活者の男性の死亡事故について、加害者は、被害者が赤信号で横断していたと捜査機関に誤認させるために、意識的に虚偽の供述をしていたこと、そのために遺族自らが目撃情報の収集を行うなど真実発見のための情報収集活動を余儀なくされ、多大な苦労を被ったこと、事故の責任を転嫁する供述により被害者の名誉や遺族の心情が大きく害されたこと等の事情から、合計3000万円(本人分2150万円、妻400万円、子3人各150万円)の慰謝料を認めた事例(福岡高裁平成27年8月27日判決)
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